【2025年版】塗装下地としてのシーリング材に「高耐候」は必要か?
■ 普及する高耐候シーリング材
2025年現在、窯業系サイディングボードの外壁塗装において、
高耐候シーリングを使われる方が多くなっています。
しかし、10〜15年ごとの塗り替えを前提とした
一般住宅のメンテナンスにおいて、
“塗装下地としてのシーリング”は
本当に高耐候性のシーリングが
必須なのか疑問を持ちました。
そこで、実際の現場でのシーリングの劣化状態や
アフターフォロー時の点検結果に加え、
屋外暴露試験・ブリード試験・弾力試験などの検証結果、
シーリングの上に塗膜がある状態であれば、
高耐候性は必須ではないという結論に至りました。
塗装下地においては高耐候性は必須ではない理由
- 塗膜によってシーリングが覆われることが前提であれば、
1~2mm程度の露出による表面劣化は
構造上の問題にはつながりにくい。 - 実際、20年経過の塗膜ありのシーリングは、
弾力・密着性ともに良好な状態であることが確認されている。
シーリング材に求める性能一覧
【図表1】塗装下地として求められるシーリング性能
| 項目分類 | 主な内容 |
|---|---|
| 初期性能 | 初期の痩せ、弾力、厚み確保 |
| 経年耐久性 | 経年の痩せ、弾力、耐疲労性、剥離までの時間と挙動 |
| 化学的安定性 | タック、ブリード、周辺塗膜への影響 |
| 接着性能 | プライマーとの密着、2液型か否か(硬化不良リスク) |
| 施工性・実務性 | 使用塗料との相性、乾燥時間、容量・荷姿・価格、季節対応 |
※ 上記に「高耐候性」は含まれていない点に注目
3. 実証データ:築年数経過による検証
【図表2】築年数とシーリングの状態比較(変性シリコン)
| 築年数 | 状態 | 表面 | 内部 | 弾力 |
| 築20年 | 塗膜あり | 軽度の表面劣化 | 劣化ほぼ無し | 弾力維持 |
| 築17年 | 塗膜なし | 表面劣化あり | 若干劣化有り | 若干低下 |
塗膜で保護されていれば
10~15年程度は性能維持の可能性あり。
4. 高耐候シーリングの盲点
“高耐候”だからといって万能ではない
- 高耐候と謳われる製品の中には、
- 経年劣化で硬化しやすい
- 密着性が悪い
- ブリードしやすい
- 破断しやすい
などのシーリング材もあり、
付着・弾力・耐候性のテストをする必要がある。
● 高耐候のデメリット
シーリングの耐候性を向上させるため、
弾力性やノンブリード性能が犠牲になるケースもある。
5. より重要な施工品質と管理
【図表3】正しい施工で耐久性を高めるポイント
| 工程 | 重要なチェックポイント |
| 既存処理 | 増打ち時の脱脂清掃、既存シーリングの撤去 |
| 含水確認 | 目視で乾燥していても水分残留の確認が必要 |
| プライマー | 均一な塗布、できれば2回塗り |
| 厚みの確保 | 痩せを見越して規定以上の厚みを確保 |
● 材料選定よりも「施工不良」が主な原因に
【層間剥離】
一概には言えませんが、
シーリングの層間剥離は
プライマー不足や施工時の含水によるものが多く、
他社プライマーなどの使用などがあります。
【劣化】
シーリングは厚みが必要なため、
薄いシーリングでは劣化が早くなってしまいます。
6. 最適な判断は“現場ごと”に変わる
- 例えば以下のようなケースでは高耐候が必要になる。
- シーリングの上の塗膜が剥離した場合や
1~2ミリのひび割れが気になる場合。 - 施主様のご希望。
- 露出でシーリングを打設する場合。
- シーリングの上の塗膜が剥離した場合や
あくまで現場の状態・環境を見極めた上での判断が重要。
【まとめ】「高耐候」に頼りすぎる営業や施工
塗装下地として使用されるシーリング材において、
- 「高耐候=絶対的に優れている」
という認識は誤解であり、
初期性能、密着性、経年安定性、
施工性などを総合的に
考える必要があると思います。
現場に応じた適切な選定や
確実な施工確保が
外壁塗装には必要だと考えています。
